Skip to main content
Solved

NSCモードでのマシンビジョンシステムの見栄え評価

  • December 27, 2023
  • 1 reply
  • 189 views

Takashi Ishikawa
Zemax Staff
Forum|alt.badge.img+1

OpticStudioノンシーケンシャルモードで、マシンビジョンシステムのような対象物を観察する光学系の見栄えシミュレーションを行う方法を説明します。

 

Best answer by Takashi Ishikawa

OpticStudioノンシーケンシャルモードで光源・観察対象オブジェクト・撮像系を設定することで、それぞれの特性を反映した撮像結果をシミュレーションできます。撮像系を人の目やカメラにすれば、その光学特性に基づいた見栄えを解析やマシンビジョンシステムの解析が可能になります。

今回作成したサンプルモデルでは、光源→観察対象→撮像系の順に光線が追跡されます。仮想的な平面光源から白色光を照射します。異なる分光および散乱特性が設定された観察対象オブジェクトがその光を反射します。撮像系はその反射光を取り込んでディテクタに結像します。

 

以下に、この光学系の構成要素の設定について説明します。

<撮像系>

撮像系はOpticStudioシーケンシャルモードで設計したカメラレンズをノンシーケンシャルモードに変換しました。必要に応じて、焦点距離やFナンバーの調整を行うこともできます。シーケンシャルモードのデータをノンシーケンシャルモードに変換するときは、NSCグループに変換ツールが便利です。

 

ノンシーケンシャルモードに変換した後、絞り面に環オブジェクトを設定します。3Dレイアウトや光線追跡の結果を確認しながら、絞りの環オブジェクトのサイズや、意図しない経路でディテクタに到達する光線を遮蔽するような吸収性のオブジェクトを追加します。像面位置に設置したディテクタの光線分布が出力結果になります。カラー画像を取得したい場合は、ディテクタ(色)オブジェクトを追加します。

 

<光源>

今回は簡易的に、光源(矩形)を観察対象オブジェクトの上部に設置し、そこから白色光で照明しています。OpticStudioでは光源オブジェクトが出射する光線の波長特性を設定する方法が様々あります。今回は、色温度6500K、スペクトル数50、波長範囲を380nm~780nmで自動生成するように設定しました。

 

<観察対象オブジェクト>

今回の観察対象オブジェクトは、3つの球体と1枚のベースプレートです。オブジェクトそれぞれには異なる反射特性が設定されており、最終的な見栄え評価でその効果を確認できます。

 

今回のサンプル向けに、Ansys Speosのライブラリから標準的な赤・緑・青の反射特性を参照し、OpticStudioのコーティングデータを作成しました。コーティングデータ“COATING_project231226.DAT”は、添付のプロジェクトファイルに含まれています。

 

1つの球の光学的な表面特性を確認します。表面特性は、オブジェクトプロパティのコーティング/散乱タブで設定します。透過・反射の波長特性は、コーティングで設定します。例えば、青色に見える球体とする場合は、SPEOS_SAMPLE_BLUEを設定します。

散乱特性はその右側の“散乱”枠で設定します。今回は、ガウシアン散乱モデルを使用しました。シグマの値によって散乱の大きさが変化し、大きな値になるほど完全散乱に近づき、マットな質感に見えます。小さな値にすると正反射方向への散乱が多くなり、光沢感のある質感に見えます。散乱光線本数は3本として、入射光線1本につき生成される散乱光線を大きくしています。散乱比率は1=100%で、入射した光線はすべて散乱光に変換されます。

 

今回のシミュレーションのカギが重要度サンプリングです。この機能によって、散乱光線が生成される方向と角度を限定できます。そのメリットは、ユーザが興味のある経路のみを考慮した光線追跡が可能となるため光線追跡の効率が劇的に改善されることです。

今回は、以下のように散乱光線の発生方向を撮像系の第1レンズに設定しました。これにより、球体とベースプレートで生成された散乱光線はすべて撮像レンズに向けて生成されます。

実際には、球体とベースプレートの多重反射などがあるので、高精度なシミュレーションを行う場合は重要度サンプリングの設定には十分に注意する必要があります。

 

解析光線本数2000万本で光線追跡を実行すると、マシン性能にも依存しますが2.5GHz 8コアのマシンで、およそ2分で下図のような結果が得られます。ディテクタに到達した光線数はおよそ1500万本でした。左がディテクタ(矩形)で取得した撮像系のディテクタ面上での照度分布、右がディテクタ(色)で取得したカラー画像です。

 

このシミュレーションでは、観察対象における空間的な明るさ(照度)の情報と、角度的な明るさ(光度)の情報の両方を含んだ、輝度の解析を行っています。ただし、解析結果は撮像系の焦点面に設定したディテクタ上で取得されているため、観察対象面の絶対値を表していないことに注意してください。

空間的な明るさと角度的な明るさについては、以下のフォーラムポストも参照してください。

明るさの空間分布と角度分布、照度と輝度の簡易的な説明 | Zemax Community

 

View original
Did this topic help you find an answer to your question?

1 reply

Takashi Ishikawa
Zemax Staff
Forum|alt.badge.img+1

OpticStudioノンシーケンシャルモードで光源・観察対象オブジェクト・撮像系を設定することで、それぞれの特性を反映した撮像結果をシミュレーションできます。撮像系を人の目やカメラにすれば、その光学特性に基づいた見栄えを解析やマシンビジョンシステムの解析が可能になります。

今回作成したサンプルモデルでは、光源→観察対象→撮像系の順に光線が追跡されます。仮想的な平面光源から白色光を照射します。異なる分光および散乱特性が設定された観察対象オブジェクトがその光を反射します。撮像系はその反射光を取り込んでディテクタに結像します。

 

以下に、この光学系の構成要素の設定について説明します。

<撮像系>

撮像系はOpticStudioシーケンシャルモードで設計したカメラレンズをノンシーケンシャルモードに変換しました。必要に応じて、焦点距離やFナンバーの調整を行うこともできます。シーケンシャルモードのデータをノンシーケンシャルモードに変換するときは、NSCグループに変換ツールが便利です。

 

ノンシーケンシャルモードに変換した後、絞り面に環オブジェクトを設定します。3Dレイアウトや光線追跡の結果を確認しながら、絞りの環オブジェクトのサイズや、意図しない経路でディテクタに到達する光線を遮蔽するような吸収性のオブジェクトを追加します。像面位置に設置したディテクタの光線分布が出力結果になります。カラー画像を取得したい場合は、ディテクタ(色)オブジェクトを追加します。

 

<光源>

今回は簡易的に、光源(矩形)を観察対象オブジェクトの上部に設置し、そこから白色光で照明しています。OpticStudioでは光源オブジェクトが出射する光線の波長特性を設定する方法が様々あります。今回は、色温度6500K、スペクトル数50、波長範囲を380nm~780nmで自動生成するように設定しました。

 

<観察対象オブジェクト>

今回の観察対象オブジェクトは、3つの球体と1枚のベースプレートです。オブジェクトそれぞれには異なる反射特性が設定されており、最終的な見栄え評価でその効果を確認できます。

 

今回のサンプル向けに、Ansys Speosのライブラリから標準的な赤・緑・青の反射特性を参照し、OpticStudioのコーティングデータを作成しました。コーティングデータ“COATING_project231226.DAT”は、添付のプロジェクトファイルに含まれています。

 

1つの球の光学的な表面特性を確認します。表面特性は、オブジェクトプロパティのコーティング/散乱タブで設定します。透過・反射の波長特性は、コーティングで設定します。例えば、青色に見える球体とする場合は、SPEOS_SAMPLE_BLUEを設定します。

散乱特性はその右側の“散乱”枠で設定します。今回は、ガウシアン散乱モデルを使用しました。シグマの値によって散乱の大きさが変化し、大きな値になるほど完全散乱に近づき、マットな質感に見えます。小さな値にすると正反射方向への散乱が多くなり、光沢感のある質感に見えます。散乱光線本数は3本として、入射光線1本につき生成される散乱光線を大きくしています。散乱比率は1=100%で、入射した光線はすべて散乱光に変換されます。

 

今回のシミュレーションのカギが重要度サンプリングです。この機能によって、散乱光線が生成される方向と角度を限定できます。そのメリットは、ユーザが興味のある経路のみを考慮した光線追跡が可能となるため光線追跡の効率が劇的に改善されることです。

今回は、以下のように散乱光線の発生方向を撮像系の第1レンズに設定しました。これにより、球体とベースプレートで生成された散乱光線はすべて撮像レンズに向けて生成されます。

実際には、球体とベースプレートの多重反射などがあるので、高精度なシミュレーションを行う場合は重要度サンプリングの設定には十分に注意する必要があります。

 

解析光線本数2000万本で光線追跡を実行すると、マシン性能にも依存しますが2.5GHz 8コアのマシンで、およそ2分で下図のような結果が得られます。ディテクタに到達した光線数はおよそ1500万本でした。左がディテクタ(矩形)で取得した撮像系のディテクタ面上での照度分布、右がディテクタ(色)で取得したカラー画像です。

 

このシミュレーションでは、観察対象における空間的な明るさ(照度)の情報と、角度的な明るさ(光度)の情報の両方を含んだ、輝度の解析を行っています。ただし、解析結果は撮像系の焦点面に設定したディテクタ上で取得されているため、観察対象面の絶対値を表していないことに注意してください。

空間的な明るさと角度的な明るさについては、以下のフォーラムポストも参照してください。

明るさの空間分布と角度分布、照度と輝度の簡易的な説明 | Zemax Community

 


Reply


Cookie policy

We use cookies to enhance and personalize your experience. If you accept you agree to our full cookie policy. Learn more about our cookies.

 
Cookie settings