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回折光学素子を含む光学系のSTOP分析を行う場合、FEAデータを回折素子に適用すると光線が回折しなくなります。完璧なソリューションではありませんが、STRAの新機能を用いた対応方法をご紹介します。

STARツールで回折面(グレーティング面や位相面)にFEAデータをインポートすると、回折効果が無視されて、その面は通常の透過面もしくはミラー面として機能します。これはバグではなく、現在のSTARツールの仕様です。

新しいComponent RBMsツールを使用すると、光学部品の剛体運動を座標ブレークに置き換えることができます。この機能によって、特定の光学部品の移動と傾きをオリジナルのFEAデータから切り出して定義できます。

 

以下のサンプルファイルを用いて、Component RBMsのメリットを説明します。

 

この光学系のサンプルファイルは、こちらのKBAでダウンロードできます (分光器の構築法 - 実装 – 日本語ヘルプ (zemax.com))。また、オプトメカ設計は本ポストに添付します。

Ansys Mechanicalで熱によるオプトメカ設計の変形を解析しました。ベースプレートの一部(青色部分)を固定し、全体の温度を85度に設定しました。

 

メカ部品の線形膨張によって、光学部品の相対位置が変化します。OpticStudio向けに出力したFEAデータは、OpticStudioのプロジェクトファイルに含まれています。STARツールのFEAデータビューアで確認すると、ベースプレートの固定部分を中心にして放射状に光学部品が移動していることが分かります。

 

構造データをOpticStudioにインポートします。このプロセス完了すると、OpticStudioは回折グレーティングの回折力を無視するため、光線追跡が停止します。実際には回折グレーティングが平面とみなされ光線がまっすぐ透過しており、次の面に到達していません。

 

構造データサマリで回折グレーティングのFEAデータを無視すると、光線は回折グレーティングによって屈曲しますが、回折グレーティングの変形と移動は考慮されていません。


Component RBMsは、回折グレーティングの剛体運動を座標ブレークに置き換えます。具体的には、図のように回折グレーティングの面範囲を選択して一つの光学部品として設定し、この範囲の剛体運動を座標ブレークに変換します。このプロセスは元に戻すことができないので、プロセス中にプロンプトが出るように、新しいファイルを作成することが推奨されます。

 

このツールによって、座標ブレークが自動的に生成されます。確かに、事前に確認した剛体運動に相当する数値が座標ブレークのパラメータに設定されています。光学面にはRBMが取り除かれた変形データが適用されます。ただし、この変形データは、STARの仕様により回折力を無視させるため、やはり構造データサマリで回折グレーティング面のFEAデータのチェックを外します。この設定によって、回折グレーティングを含めた光学部品の“移動”によるスポットの移動やサイズの変化を解析可能です。

 

以上のとおり、Component RBMsツールによって抽出された回折グレーティングの移動を考慮したSTOP分析が可能になりました。一方で、回折グレーティング面の変形は考慮していません。つまり、面は平坦で、グレーティングの周期や方向、構造は理想的な状態です。たしかに、上記の方法は回折光学系の完璧なSTOP分析とは言えませんが、部品の移動がクリティカルな、例えば反射型回折光学系に対しては重要な設計指針を提供します。


上記の説明で使用したサンプルファイルを添付します。FEAデータをインポートした状態のOpticStudioファイルと、Mechanicalでの熱構造解析で使用したオプトメカ設計のSTEPファイルがダウンロードできます。

なお、STARツールを使用するためには、Ansys Zemax OpticStudio Enterpriseエディションのライセンスが必要です。

 


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