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有効焦点距離とディストーション焦点距離の違いについて

多くの光学定義において、焦点距離は比較的使われる数値です。ただし、計算によって、求める焦点距離の定義が変わる事を注意しなければいけません。このブログ記事では、近軸の焦点距離の計算の違いを、有効焦点距離とディストーション焦点距離で説明します。

ディストーション (歪曲) 収差とは、光の実際の焦点が「期待される」焦点位置と一致しないことです。 では、「期待」とは何を意味するのでしょうか。 ほとんどの撮像装置の「期待値」は、h=f tanθです。これは、焦点距離に対する像高の正接に入射角をかけたもので、当たり前のことですが、f tanθの物体-像の関係は、直線を撮影しても、直線が見えることを保証しています。

まず、f tanθを例にして、ディストーション収差の本来の定義式を説明します。ここで「f」とは、有効焦点距離(EFFL)ではなく、ディストーション焦点距離 (Distortion Focal Length) です。OpticStudioでは、近軸光線を追跡して光軸との交点を求め、EFFLを算出します。近軸光線とは、光学設計の言葉で言えば、0視野、非常に小さな瞳です。 例えば、(Hx, Hy, Px, Py) = (0, 0, 0, 1E-8) となります。EFFLの大きさは、明らかに像面の位置とは関係ありません。しかし、このディストーション収差の大きさは、明らかに像面の位置に関係しています。

歪曲収差の焦点距離を定義する際には、小さな視野の主光線(Chief Ray)を追跡することになります。すなわち、(Hx, Hy, Px, Py)=(0, 1E-8, 0, 0)となります。視野が0に近づくと、収差はデフォルトで0、つまりyref = ychief = ftanθとなり、ychiefとθはどちらも実光線を追跡して得ることができます。 上の式から逆算して、この時点での焦点距離fを求めることができます。この焦点距離はディストーション焦点距離であり、明らかに像面位置に関係しています。ディストーション収差のfはそのままEFFLを使うことができないのはこのためです。

次は、実際にOpticStudioで光線追跡を行い、他のオペランドで焦点距離を求める方法を紹介します。簡単なシングルレットレンズを用いて説明します。

EFFLの計算:

1. (Hx, Hy, Px, Py) = (0, 0, 0, 1E-8)でRAIDオペランドを用いて像面のθ値を取得します。

2. (Hx, Hy, Px, Py) = (0, 0, 0, 1E-8)でRAGYオペランドを用いて面1のy値を取得します。

3. f=y/tanθを用いてfを算出します。

このf値はEFFLオペランドから得られた値と同じです。

ディストーション焦点距離の計算:

1. (Hx, Hy, Px, Py) = (0, 1E-8, 0, 0)で (REAB/REAC) を用いて物体空間のtanθを算出します。ここのθは像空間ではなく、物体空間であること注意する必要があります。

2. (Hx, Hy, Px, Py) = (0, 1E-8, 0, 0)で RAGY を用いて像面のyを算出します。

3. f=y/tanθを用いてfを算出します。

この値は「像面湾曲とディストーション」ツールから得られた値と同じです。

このように、求める光学性能によって、近軸の光線で計算する焦点距離が異なる事を紹介しました。OpticStudio内の計算は、それぞれの用途で適切な焦点距離を用いています。

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