本ポストでは、光線と各面との交点座標や光線と面の法線がなす角度の取得ができる単一光線追跡について説明します。
レンズデータは、Zemaxフォルダ\Samples\Sequential\Objectves\Doublet.zmx を使用します。
今回視野データを下図のように定義します。右側は本光学系の断面図です。
単一光線追跡値は、以下の様に 「解析」タブの「光線とスポット」アイコンから「単一光線追跡」を使用することで得ることができます。
この解析のダイアログでは、光線が出発する「物点」と、光線が「入射瞳を通過する点」の2点を指定することで光線を特定します。以下のイメージです。
OpticStudioにおいて、単一光線追跡や各種オペランドなどでは、物点の座標は、正規化視野座標を用いて表します。物面上の原点 (X=0、Y=0) と、そこから最も遠い物点の距離を 「1.0」 として、相対的に表示します。
たとえば、今回の光学系での視野データの場合、物体面上で原点から最も遠い物点は第3視野点で、
XFiled = 0°
YField = 5°
です。
本来これらの数値は入射瞳上の光軸と主光線の角度を表し、物体面までさかのぼった位置が実際の光学系の物点位置となりますが、角度を距離と同様に考えた視野座標をOpticStudioは採用しています。
こうすれば視野座標は視野を角度と設定しても、物体高や像高を視野とした場合と同等に扱えるため、採用されています。
話を戻します。
物体面上の正規化視野座標のX座標は Hx、Y座標は Hy で表示するので、第3視野点は
Hx=0
Hy=1
と表されます。
同様に、第2視野点は原点からの視野座標上の距離は第3視野点の60%ですので、正規化座標では
Hx=0
Hy=0.6
と表されます。
射瞳上の座標も入射瞳面の半径を 「1.0」 として、正規化瞳座標として表示します。
正規化瞳座標のX座標は Px、Y座標は Py で表示します。
Px=0
Py=1
は入射瞳の上端を通る光線を表すことになり、
Px=0
Py=0
は、入射瞳面上での光軸中心を通る光線を表します。
断面図はYZ面内の図ですので、X座標はすべて0です。
その中で、
Hy=1
から出発した光線が赤で3本表示されています。
その一番上の光線が
Py=1
の光線です。
中央の光線が
Py=0
の光線です。
下図は単一光線追跡の設定ダイアログの例です。
赤枠で囲ったように視野として任意を選ぶと、正規化視野座標と正規化瞳座標で指定した光線についての追跡結果が表示されます。
この例では、緑枠の様に、
Hx,Hy,Px,Py = 0,1,0,1
ですので、Yの最大値を物点として、入射瞳の一番上を通る光線です。
波長は紫枠の様に第2波長です。
一方、下図の赤枠のように視野で直接視野点を指定することもできます。
第3視野点は
XFiled = 0
YField = 5
でしたので、
Hx,Hy = 0,1
と設定したのと等価です。
なお、Hx,Hyはグレーアウトして入力できなくなりますが、指定した視野点のHx,Hyの数値自動的に入力されます。
以上のように光線を指定して OK ボタンを押せば、下図のように光線と各面の交点の座標が表示されます。
単一光線追跡を使えば、光線の角度も解析することができます。
たとえば、最大画角 (Hx,Hy = 0,1.0) の主光線 (Px,Py =0 0)の各面での光線の角度を調べることができます。
単一光線追跡を以下の様に設定します。
OK ボタンを押すと単光線追跡結果が表示されます。
最初の3列はX,Y,Z座標ですが、次の3列には
X方向余弦 Y方向余弦 Z方向余弦
と表示があり、これらのデータが各面での光線の方向余弦を示しています。方向余弦とは光線の向きを単位ベクトルで表現したとき、各軸への射影の長さで、下図の様な関係が成り立ちます。
OpticStudioでは特に断りがない場合は、X方向余弦をL,Y方向余弦をM、Z方向余弦をNで表します。
今回のケースでは単一光線追跡結果の 2列目から7列目 には下図のような数値が並んでいます。
7列目の Z方向余弦 の列は、単位ベクトルのZ軸への射影であり、アークコサインをとれば、Z方向となす角度がわかります。
上図の7列目1行目の値は
0.9961946981
ですので、
ArcCos(0.9961946981)=5.00°
から、この光線の 第1面におけるZ方向への角度が 5° であることがわかります。
(なお、7列目2行目の値は第1面での屈折後の値です。)
さらに、10列目は
入射角
と表示されています。この列の数値は、この光線と各面のローカルZ軸と入射光線がなす角度を度単位で表示します。そのため、1 面への入射角が 5.00° で、説明したように1行目のZ方向余弦のアークサインで求めた角度の値と一致します。
単一光線追跡は、OpticStudioにおけるほぼすべての解析の基本となる解析です。
例えばシーケンシャルモードで光線がエラーで射出できない、最適化がうまくいかないといったときに、この解析機能を使用することで、エラーの原因を突き止めることができることがあります。
上記のポストのサンプルファイルです。
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