- チェックポイントは、MTFのベースとなるスポット形状の妥当性です。
- 特に、ホイヘンスPSFは光学系の収差が大きいとき、焦点から離れているときに、グラフ領域を決定する像のデルタをマニュアルで調整する必要があるので注意が必要です。
以下、詳細を解説します。
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MTFの結果の妥当性に疑問がある場合は、MTF計算のベースとなるスポットの形状を確認します。
幾何光学MTFではスポットダイアグラム(左)、ホイヘンスMTFではホイヘンスPSF(右)です。
スポットダイアグラムの結果は像面上の光線分布を示しており、直感的にも妥当と判断できます。一方で、ホイヘンスPSFはスポット全体がグラフ領域に収まっておらず、正しく解析できていないと判断できます。したがって、ホイヘンスPSFから計算されるホイヘンスMTFの結果も信頼できません。
そこでまず、ホイヘンスPSFの設定画面を開きます。チェックポイントは、像のデルタ(Image Delta)です。デフォルトの設定だと0になっています。
像のデルタの詳細については、ヘルプファイルのホイヘンスPSFのページを参照してください。
デフォルトの0の場合、像のデルタは光学系の実効Fナンバーに比例します。よって、以下の特性があります。
・ Fナンバーが小さい=強く集光する光学系ほどグラフ領域が小さくなる。
・ Fナンバーが大きい=弱く集光する光学系ほどグラフ領域が大きくなる。
これは光学系のパワーと集光するスポットサイズの性質を考慮した特性です。つまり、ホイヘンスPSFの像のデルタのデフォルト設定は、「収差が大きくない光学系で、かつ焦点近傍のPSFを解析する」ことを前提としているといえます。
今回のサンプルでは追加したデフォーカスによって、焦点近傍という前提が崩れています。そのため、像のデルタで決まるグラフ領域が小さくなり、ホイヘンスPSFがグラフ領域を超えていました。
像のデルタを1.5とすることで、視野20度のPSF全体をグラフ領域に収めることができました。
ホイヘンスMTFにもホイヘンスPSFと同じ、像のデルタのパラメータがあるので、上で確認した1.5を入力してMTFを再計算し、幾何光学MTFと再度比較します。それぞれのMTFの元となるスポットダイアグラムとホイヘンスPSFも並べると、両者の結果がかなり近づいていることがわかります。
この結果から、収差が大きい、もしくはデフォーカスしている場合は、幾何光学MTFでもよい精度が得られます。回折の影響によるスポットサイズの拡大は、幾何光学的なスポットダイアグラムの拡大で覆われて重要でなくなるためです。ホイヘンスも使用できますが、膨大な計算時間を要します。