サンプルの光学系は、①光源→②ジョーンズ行列(ビルトイン or DLL)→③ディテクタ群で構成されます。
光源からは、Y方向の直線偏光を出射します。
ジョーンズ行列でエネルギーが減衰するケースはいくつかありますが、今回はQWPを例に挙げます。
A~Dのパラメータとともに、ジョーンズ行列を回転させる必要があることに注意します。
ディテクタは4つ設置し、XYZ方向それぞれの偏光を検出するディテクタと、全エネルギーを検出するディテクタとします。
Y方向の直線偏光が45度回転させたQWPを透過すると円偏光になるので、ディテクタではX方向とY方向の偏光成分が50%ずつ検出されると予想できます。
光線追跡後、ディテクタビューアの「ディテクタ」オプションで「すべての要約」を選択すると、すべてのディテクタの検出結果を一覧形式で確認できるので便利です。
<ビルトインのジョーンズ行列オブジェクト>
・ 垂直入射の場合
1Wの入力エネルギーに対して、予想通りXY方向の偏光成分が0.5Wずつ検出されました。
・ 斜入射の場合
ジョーンズ行列オブジェクトを30度傾けて、光線に入射角を与えました。すると、Y方向の偏光成分が0.375Wになり、全エネルギーを検出するディテクタで0.875Wになりました。つまり、ジョーン行列によって0.125Wが減衰したことになります。
<回折DLLのジョーンズ行列>
回折DLLのジョーンズ行列は、回折オブジェクトのオプションとして使用します。回折オブジェクトのプロパティ→光線分割で「DLL関数による分割」を選択→Jones_Matrix_NSC.dllを選択。
回折DLLのパラメータに、ジョーンズ行列オブジェクトと同様にパラメータを設定します。このDLLには将来的な機能拡張の余地としてA~Dに加えて、Ereal以降の入力セルが用意されていますが、現状はA~Dのパラメータの使用のみが意図されています。
・ 斜入射の場合
垂直入射の結果はビルトインのジョーンズ行列オブジェクトと同じになるので割愛します。30度傾けた斜入射の結果、Y方向の偏光成分が0.5Wで、全エネルギーも1.0Wとなり、入射エネルギーが保持されていることが確認できました。
他にも、入射エネルギーを一定の割合で減衰させるNDフィルタでも、ビルトインのジョーンズ行列オブジェクトでは斜入射によるエネルギーの想定外の減衰が発生します。理想的な光学系を想定してシミュレーションを行っている場合は注意が必要です。場合によっては、今回ご紹介した回折DLLのジョーンズ行列の活用をご検討ください。
<サンプルファイルについて>
上で使用したサンプルファイルに含まれる回折DLLは、DLL (Diffractive): Jones Matrix NSC | Zemax Community で提供されており、バージョン管理もこちらのポストで行われています。そのため、お手数ですが、サンプルファイルはこちらのポストからダウンロードしてください。