2020年9月15日
1 ツールと機能
1.1 最適化速度の向上 (すべてのエディション)
減衰最小二乗法最適化の速度が 3~5倍向上
OpticStudio 20.3 では、10 年以上ぶりに最適化アルゴリズムが大幅に改善されました! 減衰最小二乗法 (Damped Least Squares, DLS) 最適化アルゴリズムを使用する場合、ほとんどのユーザーに 3~5 倍の速度向上が見られます。この速度向上は、DLS アルゴリズムのマルチ スレッド化の改良であり、メリット ファンクション内のオペランドの数とコンピュータのコア数に応じて変化します。これは、個々のオペランドの計算にかかる時間を変えるものではありません。オペランドの計算時間が最適化速度のボトルネックになっている場合、最適化速度の大幅な向上はありません。
この速度改善は、ユーザーのシステムやコンピュータの仕様に応じて大きく変動し、個々のケースによって高くなったり低くなったりします。
1.2 新しい CAD ライブラリ (PROFESSIONAL および PREMIUM のみ)
CAD パーツを使用する際のパフォーマンスと速度の両方を向上させた新しい CADライブラリ
このリリースには、新しい CAD ライブラリが含まれており、OpticStudio 内で CAD パーツを使用する際のパフォーマンスと速度の両方を向上させます。既存の CAD 関連のバグのほとんどが除去されたことに加えて、CAD パーツを使用して光線追跡を行う際には、10 倍程度の速度向上が見られます。この速度の向上は、CAD パーツの数や CAD ジオメトリの複雑さに応じて変化します。
既存のライブラリを使用したい場合は、[プロジェクト環境設定] (Project Preferences) > [全般] (General) > [ACIS ライブラリを使用] (Use ACIS Libraries) を選択して、新しい CAD ライブラリをオフにすることができます。[ACIS ライブラリを使用] (Use ACIS Libraries) のチェックを外すと、OpticStudio は既存のライブラリに戻ります。

1.3 クイック歩留まり (サブスクリプションの PROFESSIONAL および PREMIUM のみ)
クイック歩留まりが高速化され、複数の設定をサポート
[クイック歩留まり] (Quick Yield) が複数のコンフィグレーションをサポートするようになりました。さらに、複数の視野、複数の波長、またはマルチコンフィグレーション システムのクイック歩留まり計算は約 3 倍速くなり、視野/波長/コンフィグレーションの数に応じてスケーリングされます。

注意: TEXI/TEZI オペランドを使用している場合、クイック歩留まりが正確な結果を与えないという既知のバグがあります。これは次のリリースで修正されます。
1.4 クイック感度 (すべてのエディション)
クイック感度が TDV フォーマットでのデータ出力と、すべてのオペランドの使用をサポート
[クイック感度] (Quick Sensitivity) は、[公差データ ビューア] (Tolerance Data Viewer) と同じフォーマットを使用してデータを出力するようになりました。さらに、クイック感度を使用する際のオペランドの制限がなくなりました。
1.5 設計テンプレート (サブスクリプションのすべてのエディションのみ)
設計テンプレートに反射型システム検索基準の追加
[設計テンプレート] (Design Templates) には、ミラーを含むまたは除外する新しい検索基準が含まれています。さらに、[著者] (Author) と [注釈] (Notes) が新しい検索基準になりました。

1.6 新しい DLLS: 新しいグレーティング形状 (サブスクリプションのPREMIUM のみ)
ブレーズド グレーティング (srg_blaze_RCWA.dll) とユーザー定義グレーティング (srg_user_defined_RCWA.dll) の追加
RCWA モデルでシミュレーションするための 2 つの回折 DLL として、ブレーズド グレーティングと任意のユーザー定義グレーティングを新たに追加しました。ユーザー定義 RCWA DLL は、グレーティングの形状を定義したテキストファイルを読み込みます。
詳細は、 Simulating diffraction efficiency of surface-relief grating using the RCWA method の記事を参照してください。
1.7 RCWA DLLS の新機能 (サブスクリプションのPREMIUM のみ)
新しいパラメータ 「Only these orders」 と 「Stochastic Mode」 の追加、および、補間モードでサンプリング レートの指定をサポート
RCWA DLL に 2 つの新しいパラメータが追加されました。「Only these orders」 は、ユーザーが追跡するオーダーを指定することができます。「Stochastic mode」 は 「Monte Carlo mode」 とも呼ばれ、各オーダー間のエネルギー分布に基づいて確率的に光線を回折させることができます。どちらもシステムを効率的にシミュレーションするのに便利です。このアップデートは、srg_blaze_RCWA.dll、srg_GridWirePolarizer_RCWA.dll、srg_step_RCWA.dll、srg_trapezoid_RCWA.dll、srg_user_defined_RCWA.dll を含むすべての RCWA DLL に適用されます。
詳細は Simulating diffraction efficiency of the surface-relief grating using the RCWA method の記事を参照してください。
1.8 RCWA 可視化ツールの拡張 (サブスクリプションのPREMIUM のみ)
ユーザーが RCWA DLL を使って簡単にシステムをセットアップできる機能の追加
ユーザー拡張 RCWA 可視化ツールにいくつかの機能が追加されました。左下隅には、「Only these orders」 というパラメータを設定するための小さなツールが追加されました。下部中央には、各層の格子の詳細データを表示するための 2 つの表が追加されました。これは、ユーザー定義の RCWA DLL のテキストファイルが正しい形式であるかをチェックするのに特に便利です。右側には、ユーザーがグレーティングをテストするためのシステムを設定するのに役立つ、小さなツールが追加されています。
詳細は、Simulating diffraction efficiency of surface-relief grating using the RCWA method の記事を参照してください。

2 プログラミング
2.1 ZOS-API: 解析ヘッダー データ (PROFESSIONAL および PREMIUM のみ)
ZOS-API ですべての解析ヘッダー データへアクセス
すべての解析は、API でヘッダー データにアクセスできるようになりました。
2.2 ZOS-API: 物理光学伝搬 (PROFESSIONAL および PREMIUM のみ)
ZOS-API が物理光学伝搬の設定と結果をサポート
ZOS-API を使用して、[物理光学伝搬] (Physical Optics Propagation) 解析の設定と結果が利用できるようになりました。
2.3 ZOS-API: 公差解析データ ビューア (PROFESSIONAL および PREMIUM のみ)
ZOS-API が公差解析データ ビューアからのデータアクセスをサポート
ZOS-API を使用して、[公差解析データ ビューア] (Tolerance Data Viewer) のデータが利用可能になりました。
2.4 ZOS-API: 歩留まり (サブスクリプションの PROFESSIONAL および PREMIUM のみ)
ZOS-API が歩留まりの設定と結果をサポート
ZOS-API を使用して、[歩留まり] (Yield) 解析の設定と結果を利用できるようになりました。
2.5 ZOS-API: 公差ヒストグラム (サブスクリプションの PROFESSIONAL および PREMIUM のみ)
ZOS-API が公差ヒストグラムの設定と結果をサポート
ZOS-API を使用して、公差 [ヒストグラム] (Histogram) 解析の設定と結果が利用できるようになりました。
2.6 ZOS-API: 熱解析の設定 (PROFESSIONAL および PREMIUM のみ)
ZOS-API が熱解析の設定と実行をサポート
ZOS-API を使用して、[熱解析] (Make Thermal) ツールの設定が利用できるようになりました。
2.7 ZOS-API: 波長に対する内部透過 (PROFESSIONAL および PREMIUM のみ)
ZOS-API が波長に対する内部透過の設定と結果をサポート
ZOS-API を使用して、[波長に対する内部透過] (Internal Transmission vs. Wavelength) 解析の設定と結果が利用できるようになりました。
3 パフォーマンスおよび安定性の改善
OpticStudio 20.3 には、以下の機能改善が含まれています。
ツールと機能
·[公差解析データ ビューア] (Tolerance Data Viewer) – 公差解析の設定でポリノミアルが選択されている場合に、ポリノミアル項が感度解析に表示されるようになりました。
·[公差解析データ ビジュアライゼーション] (Tolerance Data Visualization) – 公差解析データ ビジュアライゼーション (歩留まりおよびヒストグラム) で、公差オペランドの単位を識別できるようになりました。それによって、ユーザーが似たようなデータ タイプのデータを重ね合わせることが可能になりました。
·[設計テンプレート] (Design Template) – 設計テンプレート ライブラリの読み込み時間が改善されました。
4 バグ修正
OpticStudio 20.3 には、以下のバグ修正が含まれています。
ツールと機能
·CADファイルのエクスポート – [開始面] (First Surface) = [終了面] (Last Surface) と [面をソリッドとする] (Surfaces As Solids) をチェックしたとき、CAD のエクスポートが正しく動作するようになりました。
·TOLR オペランド – グローバル最適化やハンマーなどの長時間の最適化処理中に、TOLR メリットファンクション オペランドを使用するとクラッシュする問題が修正されました。
·[公差スクリプト] (Tolerance Scripts) – 公差スクリプト CPAR コマンドを更新し、公差解析中に可変パラメータを持つ面をコンペンセータに正しく変換できるようにしました。
·[公差解析データ ビューア] (Tolerance Data Viewer) – コンペンセータに対して、公差解析データ ビューアのモンテカルロ タブとサマリー タブとで異なる公称値を出力する問題を修正しました。
·[公差解析] (Tolerancing) – ZPL 経由で多項式キャッシュを使用した公差解析を実行するとき、キャッシュが正しく使用され、GUI 経由で実行した場合と同様の速度向上が見られるようになりました。
·[公差解析データ ビューア] (Tolerance Data Viewer) – スクリプトの実行時に SZERNIKE キーワードが公差解析データ ビューアに含まれるようになりました。
·[公差解析データ ビューア] (Tolerance Data Viewer) – 公差解析データ ビューアが、[プロジェクト環境設定] (Project Preferences) > [エディタ] (Editor) セクションで定義されている適切な小数点以下の桁数を表示しない問題を修正しました。 Compact を選択しても、小数点以下 15 桁がデフォルトで正しく表示されないことに注意してください。
·[公差解析データ ビューア] (Tolerance Data Viewer) – 公差解析データ ビューアの [統計] (Statistics) セクションを更新し、パーセント設定が選択されている場合に、正しい最大値と最小値のTRAD半径オペランド値を表示するように修正しました。
·[公差解析データ エディタ] (Tolerance Data Editor) – 公差解析データエディタの [公差解析時にこのオペランドを無視する] (Ignore this Operand During Tolerancing) の設定をチェックすると、モンテカルロ実行中にオペランドを正しく無視するようになりました。
·[公差解析データ ビューア] (Tolerance Data Viewer) – すべてのデータ値がゼロの場合に、公差解析データ ビューアで 「rounding digits must be between 0 and 15 inclusive」 という誤ったエラーメッセージが表示される問題を修正しました。
·[公差解析データ ビューア] (Tolerance Data Viewer) – 公差解析データ ビューアを更新し、コンペンセータが近軸焦点に設定されている場合、適切な後方焦点距離を反映するように修正しました。
·[公差解析データ ビューア] (Tolerance Data Viewer) - TEXI_オペランドは、公差解析データ ビューアで完全な結果を表示するようになりました。
·[幾何エンサークルド エネルギー] (Geometric Encircled Energy) – 幾何エンサークルド エネルギー プロットを複数回連続して更新する際のメモリの問題を修正しました。
·[公差解析データ ビューア] (Tolerance Data Viewer) – スクリプトを使用して REPORT キーワードを使用するとき、公差解析データ ビューアに正しい値が表示されるようになりました。評価できないモンテカルロ ファイルは、基準値に 9e9 がデフォルトで設定されるようになりました。
·[パワー瞳マップ] (Power Pupil Map) – パワー瞳マップとパワー視野マップ解析での自動スケールの表示問題を修正しました。
·[公差解析データ ビューア] (Tolerance Data Viewer) – 視野/コンフィグレーションの個別計算がチェックされている場合、公差解析データ ビューアは、各視野およびコンフィグレーションの個々の基準値を正しく表示するようになりました。
·[面の曲率] (Surface Curvature) - ZOS-API で面の曲率解析の設定が正しくない問題を修正しました。
·[公差解析データ ビューア] (Tolerance Data Viewer) – [感度をスキップ] (Skip Sensitivity) が選択されている場合、公差解析データ ビューワの [感度] (Sensitivity) タブが抑制されるようになりました。
·[Q タイプ自由曲面] (Q Type Freeform) – Q タイプ自由曲面の図面におけるサグ計算問題が修正されました。