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2024 R2.02リリース ノート
2024年9月11日

 

1 ツール、機能及び利便性


1.1 応力複屈折の追加(Enterpriseエディション) 

STARツールにて応力複屈折データ解析をサポート 

応力複屈折は、光弾性効果によって透過型光学材料に機械的応力が作用することで生じる現象です。これは、射出成形レンズを使用する複雑なシステム、例えば自動車のヘッドアップディスプレイ (HUD) 、拡張現実ヘッドセット、スマートフォンのカメラレンズなどにおいてますます重要性を増している物理現象です。これらのシステムの多くは、製造過程で生じる内部応力や、光学部品の取り付けによる機械的応力に起因する偏光の変化に対して敏感です。この応力によって生じる偏光変化の影響は、現在STARでインポートすることが可能であり、応力複屈折の影響をモデル化できます。STARのパフォーマンス解析とシステムビューアに新たなオプションが追加され、これらの影響を確認することが可能になりました。 

 

 

上記の画像は、標準的な光学システム(左)と応力が加わった光学システム(右)におけるOpticStudio 偏光瞳マップ] (Polarization Pupil Map) を示しています。応力複屈折の影響は、標準的なOpticStudioの解析だけでなく、STARのシステムビューアやパフォーマンス解析ツールを使用して定量化できます。

 

1.2 合成面:NSCへの変換をサポート(すべてのエディション) 

合成面がノンシーケンシャルモードで使用可能 

NSCグループに変換] (Convert to NSC Group) ツールを使用して、/合成面] (Composite Surface) をノンシーケンシャルモードに変換する機能が追加されました。変換プロセスの中でシーケンシャルモードの合成面で積算されたサグ量がノンシーケンシャルモードの 複合レンズ] (Compound Lens) オブジェクトの前面または背面の対応する tグリッドサグ面] (Grid Sag Surface) としてに変換されます。この強化により、合成面がより強力にサポートされノンシーケンシャルモードのシミュレーションや解析がより柔軟に行えるようになりました。 

 

1.3 LSWM Static Link – xy空間変形のサポート (すべてのエディション) 

LSWMがグレーティングの空間変化に対応 

LSWM Static Linkプラグインが更新され、基板上で空間的に変化する回折格子をサポートするようになりました。回折格子の形状、周期、および方向は、直交座標または極座標の関数として設定できます。従来のワークフローと同様に、データはLumericalから拡張子が.jsonのファイルとして生成する必要があります。ファイル形式が、空間的な変動をサポートするように更新されました。詳細は「Lumerical Sub-wavelength Model: Introduction and Data Generation – Ansys Optics」でご確認ください。 

 

1.4 光線フットプリントのCADへのエクスポート (すべてのエディション) 

光線フットプリントにて意図しないオプトメカとの干渉を防止 

シーケンシャルモードでは、光線のフットプリントをCADオブジェクトのレイヤーとしてエクスポートできるようになりました。CADファイルのエクスポート] (Export CAD File) ツールでは、このエクスポートをCADファイルに追加するためのチェックボックスと、保存するレイヤーを指定するためのドロップダウンが用意されています。このチェックボックスを選択すると、CADファイルのエクスポート] ツールは光線数や光線パターンの設定を無視し、光学面と交差する際の最外周の全波長のフットプリントを組み合わせて生成します。各光学面の各視野に対して、光線フットプリントが生成されます。この光線フットプリントのCADエクスポートは、アクティブゾーン外のオプトメカ筐体の設計や、意図しない画像のコンタミ、全反射(TIR)、およびケラレを回避するために、CADユーザーに渡すことができます。 

 

 

1.5 ISO-10110 図面の改良 (すべてのエディション) 

ISO図面ツールの光学公差とレンズ形状データの強化 

ISOエレメント図 (ISO Element Drawing) ツールの新しい更新により、LDEおよびTDEのインポートに新しい値と動作が追加されました。TDEのインポートでは、ISO10110の図面に新しい表面公差形式が実装され、“3/A (B/C) RMSx < D"の形式で表示されます。これに伴い、TIRR、TEZI、TCUR、TRAD、TFRNのインポート動作に対する公差オペランドが更新されました。ISOA、ISOB、ISOC、およびISODの公差オペランドがサポートされています。LDEのインポートでは、サグ値と周辺レンズの厚さ(MLT)が自動的に入力されます。また、ISOエレメント図ツールのUIにも更新が行われ、ボタンラベルの改善、ツールチップの追加、新しいコメント欄、およびISO 10110図面レイアウトにおけるTWAVおよびサグ値の表示が追加されました。さらに、ISO図面をJPGおよびPNG形式で保存するためのAPIエクスポートオプションが追加され、XMLファイルにサグ/MLT/表面形状公差値のエクスポート機能が強化されました。

 

1.6 STAR GRIN パフォーマンスの向上 (Enterpriseエディション) 

熱及び直接屈折率のGRINによるSTOP分析パフォーマンスの向上 

STAR 温度] (Thermal) および o直接屈折率] (Direct Index GRIN) に対するパフォーマンスの改善が行われ、STOP解析の計算速度が向上しました。GRIN光線追跡を必要とする計算が、これらのマルチフィジックスデータ型を使用するすべてのSTARシステムにおいて、より効率的になりました。特別な設定は不要で、<温度] または p直接屈折率] データセットを読み込み、OpticStudioで解析を実行するだけで、速度の向上を実感できます。 

 

 

上記のグラフは、光学面に7つの構造変形ファイルと3つの熱ファイルを読み込んだビームステアリングのサンプルファイルにおける計算時間の減少を示しています。計算は軽量のノートパソコンで実行されました。 

 

1.7 CAD 単位設定  

CAD単位設定でジオメトリを正しくスケーリング  

CAD単位は、OpticStudioのすべてのCADジオメトリの測定単位を定義します。この設定により、Parasolidライブラリを使用して操作を実行する際に、ジオメトリがどのようにスケールされるかが決定されます。Parasolidでジオメトリを作成する場合、すべての「インターフェイス」ポイントにおいて、OpticStudioとParasolid間のスケール差を考慮します。 エクスポートされたCADファイルは、指定されたCAD単位を使用して作成されますが、ネイティブParasolidファイルは常にメートル単位で作成されます。 

デフォルトでは、CAD単位はレンズユニットと同じになり、OpticStudioとParasolid間でジオメトリのスケーリングは行われません  

 

1.8 コストエスティメータの改善 

コストエスティメータツールがシンプルに 

OpticStudioのメインメニューにある 公差] (Tolerance) タブの 製造ツール] (Production Tools) グループから、コストエスティメータ] (Cost Estimator) ツールが削除されました。リアルタイムのコスト見積もりは、引き続きISOエレメント図] (ISO Element Drawing) を使用して行うことができます。この変更により、コストエスティメータ] ツールが簡素化され、改善された"ISOエレメント図]のメンテナンスが向上します。 

また、LaCroixは "コストエスティメータ] のプロバイダから削除され、顧客体験がよりスムーズになりました。LaCroixは今後もAnsys Zemax OpticStudioの貴重なパートナーおよび協力者です。 

 

 

2 パフォーマンスと安定性の向上 


2.1 LSWM ダイナミックリンクの改善 (すべてのエディション) 

よりクリーンでシームレスなLSWM 

LSWMのLumericalプラグインとのダイナミックリンクに大きな改善が加わり、ユーザーエクスペリエンスが大幅に向上しました。以前は、システムが500回のRCWA計算呼び出しごとにLumericalウィンドウを再度開いていましたが、これにより最適化中に複数の空のLumericalウィンドウが表示される問題が発生していました。これは、メモリリーク問題への一時的な対策でしたが、その根本的な問題が解決されたため、プロセスが簡素化されました。最新のLumerical-sub-wavelength-dynamic-link-2024R2-2.dllでは、この動作が削除され、よりスムーズで効率的なワークフローが実現されています。 

 

 

3 ライブラリ及びカタログ 


3.1 ファイルの更新 (すべてのエディション)

NHGマテリアルカタログの更新と新ベンダーSALIENCEの追加 

 

r材質カタログ] (Materials Catalog) 

  • 高度な光学設計のための新しい材料ベンダーSALIENCE社のカタログが追加されました。  
    • 新規追加の材質: H-LAF1S, H-LAF2S, H-LAF3B, H-LAF4S, H-LAF5S, H-LAF6S, H-LAF10S, H-LAF50S, H-LAF51S, H-LAF52S, H-LAF53S, H-LAF54S, H-LAF55S, H-LAF62S, H-LAK1S, H-LAK2S, H-LAK3S, H-LAK4S, H-LAK5S, H-LAK6S, H-LAK7B, H-LAK8S, H-LAK10S, H-LAK11S, H-LAK12S, H-LAK50S, H-LAK51S, H-LAK52S, H-LAK53S, H-LAK54S, H-LAK59S, H-LAK61S, H-ZLAF3S, H-ZLAF4LS, H-ZLAF50S, H-ZLAF51S, H-ZLAF52S, H-ZLAF53B, H-ZLAF55D, H-ZLAF56S, H-ZLAF66S, H-ZLAF68A, H-ZLAF68N, H-ZLAF69A, H-ZLAF71S, H-ZLAF75S, H-ZLAF76S, H-ZLAF78A, H-ZLAF89S, H-ZLAF90S, H-ZLAF92S, H-ZF7S, H-ZF13S, H-ZF52S, H-ZF62S, H-ZF71S, H-ZF72S, H-ZF88S, H-ZPK1S, H-ZPK2S, H-QK3LS, D-K9S, D-K9S-25, D-ZK2S, D-ZK2S-25, D-ZK3S, D-ZK3S-25, D-LAK6S, D-LAK6S-25, D-LAF53S, D-LAF53S-25, D-ZLAF52S, D-ZLAF52S-25  
  • NHG  
    • 2023年の製品マニュアルと比較して、新バージョンのマニュアルは主に以下の変更が加えられました:  
      • 材質
        • 10種類の新しい材料が追加されました。: H-PK71, H-LaK8B, H-ZF4AGT, H-ZF76, H-LaF3C, H-ZLaF60A, H-ZLaF76A, H-ZLaF80A, H-ZLaF82GT, H-BiF200.  
        • 次の材料が廃止されました。: H-ZLaF66GT, IRG102, IRG104.  
      • 透明性の性能調整:  
        • 材料H-ZLaF70Bの着色と内部透過率基準が改善されました。  
      • 機械的特性の調整  
        • 自動車用の5つの材料の曲げ強度が更新されました。:H-LaF50B, H-ZLaF50, H-ZLaF64, H-ZLaF68A, H-ZLaF72.  
      • 相対コストと生産頻度:  
        • 一部の材料について、相対コストと生産頻度が更新されました。  

 

4 バグの修正 


  • lNSC 面のサグ] (NSC Surface Sag) 解析で光線追跡の設定が密かに変更される NSC面のサグ] を実行すると、システムレベルのNSC 光線追跡の設定が変更される可能性がありましたが、この問題を修正しました。 
  • <視野に対するゼルニケ係数] (Zernike Coefficients vs. Field) 解析で誤った値が出力される – :主光線の高さ] (Chief Ray Height)などの特定の種類のソルブで 視野に対するゼルニケ係数] の値が誤った計算結果を導く問題を修正しました 
  • 複合レンズ] (Compound Lens) がsバイコーニックゼルニケ面] (Biconic Zernike Surface ) およびピックアップソルブで不正確な形状を生成する - 親面の一方または両方にソルブが存在する場合に、複合レンズのジオメトリが不正確になる問題を修正しました。 
  • 複屈折材料中の異常光線 有効屈折率の計算が原因で予期せぬTIRが発生 - 複屈折媒体中の有効屈折率を求める反復ルーチンに改良を加えました。この改良により、より困難なシステムにおいても、誤ったTIRエラーなしに有効屈折率の計算を成功させることができるようになりました。 
  • POP: 表面で再サンプリング時の予期しない放射照度値 - 面における物理光学伝搬タブの設定「屈折後に再サンプリング」を有効にした際、ビームフィールド値に不必要な正規化が行われている問題を修正しました。再サンプリングループ自体が強度を保つために正規化を行っているため、この重複するステップは誤りでした。 
  • STARツール >パフォーマンス解析] (Performance Analysis)  – 1つ以上の面でSTAR効果がオフに設定され、視野タイプが実像高または近軸像高の場合に、STAR体積データを使用した光線追跡が正しく行われない問題を修正しました。この結果、STARツール sパフォーマンス解析]ウィンドウに不正確な結果が表示される可能性がありました。 
  • ROMエクスポートを終了後にボタンが反応しない>Speosへ光学設計をエクスポート] (Export to Speos Reduced Order Model) で、いくつかのOpticStudioボタンが反応しなくなる問題が修正されました。 
  • ミラー空間でシリコンの屈折率が負になる - ISO図面におけるミラーの負の屈折率表示される問題が修正され、ミラーのISO図面生成の品質が向上しました。 
  • Laguerre Beam DLLの呼び出し方によって、パイロットビームのパラメータが異なる - 物理光学伝搬でLaguerre Beam DLLを使用した場合に、パイロットビームパラメータに矛盾が生じる可能性があった問題を修正しました。 
  • モンテカルロ解析時のクラッシュ  - 公差解析でTEDX/TEDY/TEDRまたはTETX/TETY/TETZオペランドを使用するとクラッシュする問題を修正しました。 
  • NSC光線追跡で、ブールネイティブがOSを無期限にハングアップさせる - NSC光線追跡においてほぼ平面の表面を通して光線を追跡する際に「スタック」する問題を修正しました。 
  • スライダ] (Slider) ウィンドウをドッキング時にクラッシュ - スライダ] (Slider) ウィンドウをドッキングする際にクラッシュする問題が修正されました。 
  • STAR: コンポーネント RBM ツールが、コンポーネントの最初の面上の体積データ以外の体積ノードの位置を変更しない - コンポーネント RBM を削除しても、コンポーネントの最初の面にアタッチされていない体積メトリック データが調整されない問題を修正しました。 
  • STAR: 像面を含むコンポーネントを定義すると i部品RBMs] (Component RBMs) GUIが反応しなくなる – 像面を含むSTARコンポーネントを定義すると、ソフトウェアが応答しなくなる問題を修正しました。 
  • ROMエクスポートが波長設定を保存しないと誤った結果になる - 波長が保存されないと eSpeosへ光学設計をエクスポート] (Export Reduced Order Model to Speos) の結果が不正確になる問題が修正されました。 
  • 反転ツールでミラー空間の曲率の反転に失敗する -  sエレメントの反転] (Reverse Elements) ツールで、曲率が正しくない符号を持つ面や、反転されたシステムの後方焦点距離が正しくない符号を持つ問題を修正しました。 
  • 光路解析] (Path Analysis) : ZRDがない場合でもPAFファイルがあるとエラーメッセージが表示される - "光路解析] (Path Analysis) ツールは、ZRDファイルに加えて有効なデフォルトPAFファイルをチェックするようになり、有効なデフォルトPAFファイルが見つかった場合はエラーを表示しないようになりました。 
  • 波面収差マップ](Wavefront Map)の低速化 - True Freeformの導入後、:グリッドサグ] (Grid Sag) 面を含むシーケンシャルモードの光学系において、l波面収差 マップ]の計算速度が低下する問題を修正しました。 
  • NSC 3Dレイアウトでの蛍光体と蛍光 - 蛍光体および蛍光のバルク散乱に対して、ZRDファイル内の波長が正しく保存されず、蛍光体および蛍光の放射スペクトルが不正確になる問題が修正されました。 
  • FFT MTFが頻繁にクラッシュする - 波長の重みがゼロの場合にFFT MTFがクラッシュする問題が修正されました。このクラッシュは2024 R2リリース以降にのみ発生していました。