
2024年7月10日
1 ツール、機能及び利便性
1.1 FFT MTF: マルチスレッド性能の向上 (すべてのエディション)
FFT MTF解析のパフォーマンス向上
複数の視野と波長を持つシステムでCPUリソースをより効果的に利用できるように、FFT MTF解析のパフォーマンスが向上しました。以下のプロットに示されるように、複雑な設計を解析する際に大幅な速度向上が確認されています。

このプロットは、8 CPUノードを搭載したコンピュータ上で、3つの異なる例について、今回のリリースと旧バージョンを比較したFFT MTF解析の計算時間の相対的な変化を示しています。上図のように、問題の複雑さに応じてパフォーマンスが向上しており、最新の設計問題に大きなメリットをもたらします。
1.2 Speosへ光学設計をエクスポートの改善 (すべてのエディション)
Speosへ光学設計をエクスポートツールがサポートする面とオブジェクトを追加
[Speosへ光学設計をエクスポート] (Export Optical Design to Speos) ツールは、Speosでの高度なシステムレベル設計と迷光解析へのパスを提供することにより、完全な光学製品ワークフローを可能にします。この機能は、次のシーケンシャル面をサポートします。[バイコーニック] (Biconic)、[バイコーニック ゼルニケ] (Biconic Zernike)、[多項式] (Polynomial)、[拡張多項式] (Extended Polynomial)、[ゼルニケ標準サグ] (Zernike Standard Sag)、[ゼルニケ フリンジ サグ] (Zernike Fringe Sag)。 次のノンシーケンシャルオブジェクトのサポートも追加されました: [バイコーニック レンズ] (Biconic Lens)、[バイコーニック ゼルニケ レンズ] (Biconic Zernike Lens)、[拡張多項式レンズ](Extended Polynomial Lens)、[拡張多項式面] (Extended Polynomial Surface)、[ゼルニケ面] (Zernike Surface)、[バイコーニック ゼルニケ面](Biconic Zernike Surface)。
1.3 軸外しアパチャーのイレギュラリティと回転対称イレギュラリティに関する公差オペランド (すべてのエディション)
自由曲面および軸外しシステムに便利なISO-10110面形状の公差オペランドを追加
4つの新しい公差オペランドが追加され、ISO-10110-5図面標準に従って、面形状公差3/A(B/C)の正確な公差設定が可能になりました。新しいオペランドはISOA、ISOB、ISOC、ISODで、それぞれ公差解析対象の面にパワー、P-V(Peak to Valley)、イレギュラリティ、回転対称イレギュラリティ(RSI)、RMSイレギュラリティを追加します。オペランドは、軸外しアパチャーにも自動的に対応します。この機能は、自由曲面レンズや軸外しシステムの設計に特に威力を発揮します。
1.4 TSAG オペランド (すべてのエディション)
軸外しシステムの任意の座標系におけるサグを返す新しい最適化オペランド
軸外しシステムでは、軸外し部分の頂点の座標系で作業すると便利なことがよくあります。これまでのOpticStudioでは、サグは常に面の頂点のZ軸を基準にレポートされていました。新しいTSAGオペランドは、任意の方向の座標空間において、任意のXYZ原点からのサグをレポートします。これにより、ユーザーは自由曲面または軸外し面の形状を任意の便利な座標系でレポートすることができます。このオペランドは、面のサグマップ (Surface Sag map) 、面勾配 マップ (Surface Slope map)、および面の曲率マップ(Surface Curvature Map)の軸外し座標(off-axis coordinate system) オプションでも内部的に使用されます。
1.5 光源:IES TM-25 (すべてのエディション)
OpticStudio が IES TM-25 光線ファイルの保存/読み込みに対応
ノンシーケンシャルモードの[光源ファイル] (Source File) オブジェクトで、測定またはシミュレーションされた光源データの入力として TM-25 ファイルを使用できるようになりました。
OpticStudioは、ノンシーケンシャル光線追跡からTM-25光線ファイルに光線をエクスポートすることもできます。OpticStudioはTM-25 光線ファイルのエクスポート時に、TM-25 で定義されたデータに加えて、電場と位相のデータも含めます。[光源ビューア] (Source Viewer)、[波長に対する光束] (Flux vs. Wavelength)、[光源解析] (Light Source Analysis)など、その他、OpticStudioのいくつかの機能もTM-25光線ファイルをサポートするようになりました。
1.6 自動インストーラ (すべてのエディション)
自動インストーラが 2024R2 に対応
Ansys Automated Installer を使用すると、Zemax OpticStudioと他の多くのAnsys製品を1つのウィンドウからインストールできます。 すべてのAnsys製品のインストールを1ヶ所で行うことができるため、ユーザーは必要な製品をすぐに見つけることができ、複数の場所をクリックすることなく同時にダウンロードを実行できます。

1.7 ラーニングおよびサポートタブ (すべてのエディション)
新しいラーニングとサポートタブ
[ラーニングおよびサポート] (Learning and Support)タブには、[Ansys イノベーションコース] (Ansys Innovation Courses)、Ansys Learning Hub、Ansys Zemax [学習フォーラム] (Learning Forum)、[カスタマーポータル] (Customer Portal)、Ansys Zemax [ナレッジ] (Knowledge)へのリンクが含まれています。この新しいタブでは、Ansys Zemax OpticStudio内のすべてのリソースを一箇所で簡単に検索できます。

1.8 APIP(Ansys 製品改善プログラム)からの製品使用情報(すべてのエディション)
製品使用情報の改善
Zemax専用ソリューションから、開いたアプリケーションセッション数や全体的な機能の使用状況など、製品の基本的な使用データを収集する仕組みを、Ansys 製品改善プログラム(APIP)に変更しました。このオプション機能により、Ansys はお客様にとって最も重要な機能を把握し、スピードと操作性の改善に役立てることができます。

OpticStudioを起動すると、ポップアップウィンドウ(上のスクリーンショットを参照)が表示され、プログラムへオプトインするように求められます。APIPへの参加を停止するには、[設定] (Setup) -> [OpticStudio環境設定] (OpticStudio Preferences) -> [プライバシー] (Privacy)タブに移動します。
1.9 zosファイルフォーマットの廃止(すべてのエディション)
.ZOSファイルフォーマットの廃止
ZOSファイルフォーマットは廃止されました。この変更により、ワークフローが簡素化され、人が読むことが可能な.ZMX ファイル形式を必要とする長期的なユーザーのニーズに応え、Ansys Optics のユーザーエクスペリエンスの継続性が確保されます。ユーザーは常に.ZOSファイルをOpticStudioで開けます。しかし、.ZOSファイルフォーマットからの移行の一環として、保存プロセス中に.ZOSファイルに.ZMXデータが書き込まれます。
2 パフォーマンスと安定性の向上
2.1 フィルタ文字列順序フィルタ X_SEQ()の改良
X_SEQ() フィルタが 1 から 999 までのオブジェクト番号と面番号をサポートするようになりました (以前の制限 99 から増加)。この改良により、数百の面を持つ複雑なシステムコンポーネント(CADオブジェクトやレンズアレイなど)の光線フィルタのサポートが向上しました。X_SEQ() フィルタは、指定された定義済みの順序に従う光線と面を表示し、連続した光線の軌跡の解析を可能にします。
2.2 Lumericalサブ波長モデル
ダイナミックリンクの実行時に、まれにLumericalのメモリ使用量が急激に増加し、クラッシュすることがありました。この問題は、更新されたlumerical-sub-wavelength-dynamic-link-2024R2.dllにより解決されました。
3 ライブラリ及びカタログ
3.1 サンプルファイルの更新 (すべてのエディション)
新しいオプトメカニカル アセンブリ サンプルファイル
オプトメカサンプルファイルは、最適化および解析が可能な完全な光学製品例を提供することで、複数のユーザーシナリオのデモに役立ち、光学および機械製造の設計準備を促進します。インストールされたZemax Samplesフォルダには、.STEPファイルと.ODXサンプルがあり、.ODXサンプルファイルを使用することで、Ansys Zemax OpticStudioとAnsys Speos間のデータ移動がより簡単になります。
- .ODX
- 25mm Single Gauss
- Cellphone Camera Lens
- Heliar 37mm
- Laser Diode with Aplanatic Lens
- Riflescope
- STEP
- Cube Satellite
- Flash Lidar
- Laser Induced Thermal Lensing
- Schmidt Cassegrain
- Spectrometer
- Ultra Short Throw Projector
4 バグ修正リスト
- [3Dレイアウト](3D layout)のフリーズ - レイアウトウィンドウが正しく更新されなくなったり、ユーザー入力に反応しなくなったりする不具合を修正しました。
- アフォーカル光学系 - アフォーカル光学系の場合、FFT MTFテキスト出力のヘッダーテキストが正しい角周波数単位を報告するように修正しました。
- [ブラックボックス](Black box)の座標- ブラックボックスを使用した一部のシステムで光線を追跡できない問題を修正しました。
- CADエクスポート - インポートされたCADモデルのアセンブリに各部品のインスタンスが1つしか含まれていなかった問題を修正しました。
- CADファイルの形状 - CADモデルをParasolidのネイティブフォーマット(x_tとx_b)にインポートおよびエクスポートする際のスケーリングの問題を修正しました。
- [CODE V を OpticStudio に変換](Convert CODE V to OpticStudio) - CODE V を OpticStudio に変換でビネッティング ファクタの符号が正しく変更されない問題を修正しました。
- [CODE V を OpticStudio に変換] (Convert CODE V to OpticStudio)の視野値 - CODE V を OpticStudio に変換で、変換されたマルチコンフィグレーションシステムで一部の視野値が正しくない場合がある問題を修正しました。
- [ハンマー最適化](Hammer Optimization)停止時のクラッシュ - メリットファンクションに1つ以上のTOLRがある状態でユーザーが停止を選択すると、ハンマー最適化がクラッシュすることがある問題を修正しました。
- 公差解析の[感度解析]( Sensitivity)におけるテーブルデータ – [基準](Criterion)が[ユーザー スクリプト](User Script)の場合、公差レポートの感度解析テーブルと公差解析の概要テーブルでデータがずれることがある問題を修正しました。
- [波長に対する光束] (Flux vs Wavelength) 解析 - 波長に対する光束解析でレポートされる光線の数が不正確であった問題を修正しました。
- レイアウトで不正確な視野高 - [ブラックボックス](Black box)を使用したシステムで、レイアウトプロットと[シェーデッド モデル](Shaded Model)が誤った光線パスを表示する問題を修正しました
- ODX吸収データ - [Speosへ光学設計をエクスポート](Export Optical Design to Speos)ツールで吸収データが正しく計算されない問題を修正しました。
- [偏光光線追跡](Polarization ray tracing) - 偏光光線追跡で、[混合モード] (Mixed Mode) システムで位相が正しく計算されない問題を修正しました。
- 偏光システムで[光線を使用](Use Rays)と[Unpolarized](無偏光)オプションがチェックされている場合のPOPの問題 - POP 設定で無偏光が選択されている場合の偏光光学系に対して、光線を使用オプションが正しく扱えない問題を修正しました。
- [Q タイプ自由曲面](Q-Type Freeform)の動作 - Q タイプ自由曲面の光線追跡に関するいくつかの問題を修正しました。
- [ファイルへ保存](Save to file)の問題 - 複屈折データを編集した状態でファイルへ保存を使用すると、更新された値ではなく、元のデータが含まれる問題を修正しました。
- STARシステムのクラッシュ - [ブラックボックス](Black box)面を持つSTARシステムで[レイエイミング](Ray Aiming)がオンの場合にクラッシュする問題を修正しました。
- 予期しないNSC光線追跡結果 – [NSC グループに変換]( Convert To NSC Group)で、軸外し放物面が正しく変換されない問題を修正しました。
- ホワイトボックス - サポートされていない形状のエクスポートを防ぐために、[Speosへ光学設計をエクスポート](Export Optical Design to Speos)ツールにエラーチェックが追加されました。
5 既知の問題
- ライセンス - Ansys Zemax OpticStudio 2024 R2の既知の問題についてユーザーに通知します。この問題は、複数のインスタンスに複数のシートが誤って使用されることに関連します。具体的には、1つのシートは最初の2つのインスタンスで共有されますが、追加のインスタンスがインスタンスごとに追加のシートを誤って消費します。この問題の修正に向けて弊社チームは積極的に取り組んでおり、修正されたバージョンとなるAnsys Zemax OpticStudio 2024 R2.01が、7月末までにリリースされる予定です。質問や懸念事項がありましたら弊社サポートチームまでご連絡ください。