2023 R2 リリース ノート
2023 年 7 月 12 日
1 ツール、機能及び利便性
1.1 プロジェクトディレクトリ: フルカスタマイズ可能なレンズプロジェクト(すべてのエディション)
設計プロジェクトを簡単に管理してカスタマイズ
プロジェクトディレクトリ](Project Directories)は、Zemaxの重要なファイルを簡単にパッケージ化して保存し、プロジェクトごとにアクセスして操作できるようにするものです。sファイル](File)タブにプロジェクトディレクトリグループが追加され、レンズプロジェクトファイルに合わせてWindows標準のファイル管理機能を提供します。
プロジェクトディレクトリは、新しいレンズプロジェクト](New Lens Project)ボタンで新しいレンズ設計を開始するか、レンズプロジェクトに変換](Convert to Lens Project)ボタンで既存のOpticStudioの設計から作成できます。
レンズプロジェクトをカスタマイズし、サポートされていないファイルをリンクすることで、完全なプロジェクトを保存して共有できるようになりました。新しいレンズプロジェクト設定では、プロジェクトディレクトリに固有のファイルやZemax Dataルートフォルダから読み込むファイルを選択できます。また、仕様書PDFやデータXLSXファイルなど、プロジェクトに関する情報を含んでいてもレンズファイルの一部ではないような、補助プロジェクトファイルを追加することも可能です。
注意:プロジェクトディレクトリとの混同を避けるため、以前はlプロジェクト環境設定](Project Preferences)と呼ばれていたものを、現在はOpticStudio 環境設定](OpticStudio Preferences)となりました。機能的には変わりません。
1.2 Ansys Optics Launcher (すべてのエディション)
トライアルライセンスを取得し、Ansys Opticsアプリケーションギャラリーに直接アクセス
このツールは、Ansys Opticsのすべてのアプリケーションを起動するための機能です。作業中のプロジェクトやファイルを確認したり、Ansys ライセンスを設定するためのリンクが用意されています。また、Ansys Opticsのウェブサイトからアプリケーションギャラリーのサンプルに直接アクセスでき、素早く簡単に始められる沢山のシミュレーションプロジェクト例を提供しています。
また、LumericalまたはSpeosのいずれかの30日間トライアルライセンスを自動的に取得できるので、業界をリードする他のオプティクスおよびフォトニクスツールを無料で体験できます。トライアルライセンスの取得方法については、Ansys Opticsの記事をご参照ください。
このツールは、お使いのマシンに別途インストールされ、スタートメニューのAnsys Optics 2023 R2メニューに表示されます。
1.3 STAR: 部品剛体運動 (Enterpriseエディションのみ)
レンズデータエディタで、数クリックで剛体運動を座標ブレークに変換
この使いやすいツールは、光学部品(レンズやレンズ群など)を定義すると、部品レベルの剛体運動(RBM)を構成するティルトとディセンタを計算します。この部品レベルのRBMは、ワンクリックで個々の面のRBMを削除し、レンズデータエディタの面の前後に座標ブレークのセットを追加します。これにより、STOP分析の一環として、公差解析と最適化を行えます。
1.4 STAR:重み付けされたFEAデータへの対応 (Enterpriseエディションのみ)
FEAシミュレーションのノード重みを使用してRBMの計算を改善
FEAプラットフォームで保存したデータセットに定義された不均一なノードの重みを使用することで、剛体運動(RBM)の精度が向上します。これにより、よりリアルなRBMの表現が可能となり、特にFEAメッシュが不均一または不均等な場合に有効です。また、Ansys MechanicalのExport to STAR ACT Extensionがアップデートされ、保存されたデータセットにノードの重みを含めるオプションがサポートされました。
1.5 STAR: ZOS-API を使用した直接的な屈折率フィッティング(Enterpriseエディションのみ)
屈折率データセットを読み込むことで、OpticStudioのワークフロー機能を拡張
このリリースでは、OpticStudioに屈折率データセットを読み込める、新しいZOS-APIコマンドの早期利用を提供します。STARフィッティングアルゴリズムは、屈折率データセットが割り当てられた面に適用される不均一なGRINを作成するために使用されます。これにより、OpticStudioがSTAR機能でサポートするワークフローを、航空光学用途で一般的な光学システムの性能に乱流が与える影響をモデリングするケースなどに拡大されます。
1.6 合成面: マルチ コンフィグレーションの対応 (すべてのエディション)
複雑なズームレンズでも、面のイレギュラリティを容易に公差解析
Ansys Zemax OpticStudio 2023 R1で導入された合成面](Composite Surface)機能は、サグベースの面に任意のサグベース面のサグを追加できるため、複雑な面形状をシーケンシャルモードで簡単に作成することが可能です。また、この高度な機能により、回避策なしで、サグベースの面のイレギュラリティを直接公差解析ができます。
Ansys Zemax OpticStudio 2023 R2 では、新しいマルチコンフィグレーションオペランドが追加され、面プロパティの合成面セクションにある、ティルトおよびディセンタパラメータが複数のコンフィグレーションでサポートされます。
- CSDXとCSDYは、合成面におけるXとYのディセンタを表します。
- CSTX、CSTY、CSTZは、合成面におけるX、Y、Zのティルトを表します。
個々のコンフィグレーションに対して合成面の動作をオンまたはオフにするには、IGNRオペランドを使用して、特定の合成面を無視できます。
1.7 合成面:ツールや解析のサポート (すべてのエディション)
合成面を使用する際の設定、解析、エクスポート機能が向上
以下のツールや解析が、合成面を含む設計を完全にサポートするようになりました。
- Speos Lens system へのエクスポート]( Export to Speos Lens System)
- CAD ファイルのエクスポート]( Export CAD File)
- Zemax ブラック ボックス データのエクスポート]( Export Zemax Black Box)
- 物理光学伝搬]( Physical Optics Propagation (POP))
- エレメントの反転]( Reverse Element)
1.8 Speos Lens system へのエクスポート: ZOS-APIのサポート (すべてのエディション)
製品間のワークフローを自動化
Speos Lens system へのエクスポート]( Export to Speos Lens System)ツールは、Speos内の現実的な環境で正確な光学センサーシミュレーションを可能にするために、光学系の関連パラメータを含む低次元化モデル(ROM)を生成します。このモデルは、コンポーネントレベルの設計をレンダリングとビジュアライゼーションのための包括的なシステムシミュレーションに統合するために使用できます。
ZOS-APIを通じて、ツールのセットアップと実行が可能になりました。これにより、ROM作成の自動化や製品間のワークフローの合理化が可能になります。ツールへのインターフェースは、ZOSAPI.Tools.IExportToSpeosLensSystemの下にあり、すべての設定と標準機能にアクセスできます。
2 パフォーマンスと安定性の向上
- Diffraction DLL: lumerical-sub-wavelength-dynamic-link-2023R2.dll –波長数が多い場合やシステムの最適化など、多数の異なるグレーティングを実行する場合に、ダイナミックリンクがより高速で安定するようになりました。
- Diffraction DLL: lumerical-sub-wavelength-dynamic-link-2023R2.dll – OpticStudioでパラメータを変更すると、すぐにLumerical UIに反映されるようになり、光線追跡を実行してグレーティングが新しい形状になったことを確認する必要がなくなりました。
3 ライブラリ及びカタログ
3.1 Parasolid CAD ライブラリ (すべてのエディション)
従来のACIS CADライブラリをParasolidライブラリに置き換え
OpticStudioは、Parasolid CADライブラリを利用して、より速く、より正確な光学形状を作成できるようになりました。これは、OpticsBuilder にある新しい Parasolid サポートおよび Ansys Speos 内の既存の Parasolid サポートと一致しています。
Parasolid ライブラリはデフォルトで使用されます。/OpticStudio 環境設定](OpticStudio Preferences) > /全般] (General) のオプションのチェックを外すと、OpticStudio は SMS ライブラリに戻ります。
3.2 ISX 及び RSMX ライブラリ (すべてのエディション)
OpticStudio から非推奨のIS ライブラリと Radiant Source Models を削除
2023 R1 リリースで、RSMX および ISX ライブラリは非推奨となりました。非推奨の理由は、これらのライブラリが、将来的にITやセキュリティの脆弱性をもたらす可能性のある旧式のMicrosoftコンポーネントに依存しているためです。これらのライブラリおよびライブラリに依存する機能は、2023 R2 リリースで完全に削除されました。これには、以下の機能が含まれます:
- 9Radiant Source Models をダウンロード] (Download Radiant Source Models)
- "Radiant Source Models を表示] (View Radiant Source Models)
- 0光線の生成] (Generate Rays)
- リバース ラディアンス] (Reverse Radiance)
- IS ライブラリ] (IS Scatter Catalog)
上記の機能に加えて、評価関数オペランドのREVR、ReverseRadiance™ ディテクタ](ReverseRadiance™ Detector) および ターゲット オブジェクト](Target Object)も削除されました。
ISXライブラリの代わりに、簡単に更新でき、安全な方法で維持できるフォーマットに基づいて、新しいBSDF散乱ライブラリが将来のリリースでAnsys Zemax OpticStudioで利用できるようになる予定です。
4 バグの修正
- aSTAR FEA データ ビューア] (STAR FEA Data Viewer) – STARタブのFEAデータビューアで、レンズファイルを保存して再度開くと、表示されているデータが保持されるようになりました。
- 標準スポットダイアグラム] (Standard Spot Diagram) – システム エクスプローラ](System Explorer)のアフォーカル単位がスポットダイアグラムに正しく反映されない不具合を修正しました。
- NSC 光線追跡 – Ansys Zemax OpticStudio は、NSC 光線追跡ツールを使用する際に、デフォルト値に戻るのではなく、ユーザーが設定したコア数を正しく保存するようになりました。
- 屈折率分布のDLLs – シーケンシャルモードで、屈折率勾配のあるユーザー定義面やGRIN材質の後に非球面が定義されている場合の、GRIN光線追跡が改善されました。効率性を目的として、GRIN光線の交点計算にいくつかの制限が加えられ、GRIN材質内で光線の方向が反転するような特殊なケースでは、光線追跡が途中で終了される場合があります。シーケンシャルのGRIN光線追跡の問題が発生した場合は、テクニカルサポートにお問い合わせください。
- >Q タイプ自由曲面] (Q-Type Freeform) – 光線と面の交点の反復探索中に、方位角極座標が適切に更新されない問題を修正しました。この問題により多項式計算のエラーが発生し、光線と面の交点および面法線ベクトルに不正確さが生じていました。
- STAR フィット アセスメント] (Fit Assessment) – y最大レベル](Max Leve) の値を16より大きい値に設定した場合、ツールはデフォルトの値である8に戻っていました。この設定が最大16のままとなるように修正しました。
- NSC グループに変換] (Convert to NSC tool) – シーケンシャルモードの拡張多項式] (Extended Polynomial)面を対応するNSCオブジェクトに変換すると、不正確な形状になる問題を修正しました。